遺産相続 Q&A

Q. 相続人についての疑問

Q. 遺言についての疑問

Q. 遺産分割協議についての疑問

Q. 相続税についての疑問


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A. 相続人についての答え

相続人の中に未成年がいる場合は?

未成年者は遺産相続に関する法律行為を単独で行うことができないため、代理人を立てる必要があります。

通常、未成年者の代理人には親権者(親)がなりますが、未成年者と親権者が共に相続人である場合や、1人の親権者が複数の未成年者の相続人を代理する場合は、遺産分割に関して両者の間に利害関係(利益相反)が生じるため代理人にはなれません。

このような場合は、親権者または利害関係人が家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申立て、その特別代理人が未成年者を代理することとなります。

※未成年者が結婚している場合は、民法では成人と同様に扱われますので、相続に関する法律行為を単独で行うことができます。その後、離婚あるいは死別していても成人と同様に扱われます。

相続人の中に海外居住者がいる場合は?

相続人の中に海外居住者がいる場合であっても、国内にいる他の相続人同様の手続きが必要になります。

なお、海外居住者は、印鑑証明書を提出できない場合がほとんどですので、現地公館の発行する「署名(サイン)証明書」や、現住所を証明する「在留証明書」などの提出が必要となります。

相続人の中に行方不明者がいる場合は?

相続人の中に行方不明者がいる場合には、次の二つの方法があります。

① 不在者財産管理人を選任する方法

家庭裁判所に利害関係人が「不在者財産管理人」選任の申立てを行います。
不在者財産管理人は、不在者のために財産目録を作成し、財産を管理する権限を有します。また、不在者財産管理人は、不在者が相続する財産の管理・保存行為以外の権限を有しませんので、遺産分割協議への参加や不在者が相続する財産を換金する場合などは家庭裁判所から「権限外行為許可」を受けなければなりません。

② 失踪宣告を申立てる方法

行方不明者の生死が7年間明らかでないとき(普通失踪)、または戦争・船舶の沈没・震災などの死亡の原因となる危機に遭遇しその危機が去った後行方不明者の生死が1年間明らかでないとき(危難失踪)は、家庭裁判所に利害関係人が「失踪宣告」の申立てを行います。

家庭裁判所から失踪宣告が下された場合、行方不明者は法律上死亡したものとみなされますので、他の法定相続人間(代襲相続人等を含む)で遺産分割協議を行うことができるようになります。

※申立人は失踪宣告が下された後、10日以内に市区町村役場(行方不明者の本籍地または申立人の住所地)に失踪の届出を行わなければなりません。この届出により行方不明者の戸籍に記載されます。

胎児の存在が明らかな場合は?

出生前の胎児には権利能力はありませんが、民法886条において、遺産相続についてはすでに生まれたものと見なされ、相続能力が認められています。

相続による名義変更等の手続きは、通常、新生児の親権者が行うこととなりますが、新生児と親権者が共に相続人である場合などは、遺産分割に関して両者の間に利害関係(利益相反)が生じるため代理人にはなれません。

このような場合、親権者が家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申立て、その特別代人が新生児を代理することとなります。

※胎児は無事に出生することを前提としていますが、万一、生きて生まれなかった場合は遺産分割協議などのやり直しが必要となります。

相続人の中に判断能力が不十分な人がいる場合は?

相続人が精神上の障害(痴呆・知的障害・精神障害等)により判断能力が十分でない場合、家庭裁判所に本人・配偶者・四親等内の親族等が「後見開始」等の申立てを行います。

家庭裁判所において成年後見等の審判により成年後見人等が選任され、その成年後見人等が本人に代わって相続手続きに関する行為を行います。

※後見は本人の判断能力等により「後見」「保佐」「補助」に区別され、それぞれ代理権限が異なります。「後見」は財産に関するすべての法律行為についての代理権限を有しますが、「保佐」および「補助」については家庭裁判所が申立ての範囲内で代理権限を定めます。

go-to  成年後見制度

相続人の中に相続の放棄を主張する人がいる場合は?

相続放棄をした人は、「はじめから相続人ではなかったもの」とみなされます。相続財産(遺産)は残った相続人で分割することになります。

遺産の相続を放棄する旨を口頭で主張するだけでは、民法上の「相続放棄」とはなりません。民法上の相続放棄として認められるためには、家庭裁判所に相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に「相続放棄の申述」を行います。家庭裁判所が相続放棄の申述を受理した場合、はじめから相続人ではなかったことになります。

※相続放棄を主張するだけでは相続人としての地位は失われませんので、他の相続人と同様に相続手続きを行う必要があります。

go-to  相続放棄

法定相続人でも相続できない場合があると聞きましたがどのような場合ですか?

相続欠格者および相続人の廃除を受けた者は遺産を相続することができません。

<相続欠格者とは>
相続欠格者については民法891条に規定され、次の5項目が相続欠格の事由として定められています。

  • 故意に被相続人または先順位もしくは同順位の相続人を死亡させまたは死亡させようとしたために刑に処せられた場合
  • 被相続人が殺害されたことを知っているにもかかわらず告発または告訴しなかった場合
  • 詐欺または強迫によって被相続人が遺言をし、これを撤回し、取り消しし、またはこれを変更することを妨げた場合
  • 詐欺または強迫によって被相続人に遺言をさせ、これを撤回させ、取り消させ、またはこれを変更させた場合
  • 遺言書を偽造、変造、破棄または隠匿をした場合

欠格事由に該当する場合、相続人となることはできません。ただし、相続欠格者に子がある場合は、その子が代襲相続人となります。

<相続人の廃除とは>
相続人の廃除とは民法892条に規定され、推定相続人に著しい非行がある場合、被相続人が家庭裁判所に「推定相続人廃除調停の申立て」を行うことで、推定相続人が有する遺留分を含む相続権を剥奪する制度で、遺言で行うことも可能です。

相続人の廃除の事由は下記のものがあります。

  • 被相続人を虐待した場合
  • 被相続人に対して重大な侮辱を与えた場合
  • 推定相続人にその他の著しい非行があった場合

しかし、実際に家庭裁判所で相続人の廃除が認められるケースは少ないようです。

相続人廃除の申立てが認められた場合、申立人の届出に基づいて戸籍にその旨が記載され、相続人となることはできません。ただし、廃除された者に子がある場合は、その子が代襲相続人となります。

法定相続人ではない人にも相続財産(遺産)を分けることは可能ですか?

法定相続人は法律で決まっています。法定相続人以外の人に財産を遺すには、遺言書により法定相続人以外の人に財産を「遺贈」する方法が一般的です。

それ以外に法定相続人以外の人が財産を取得できるのは、相続人が誰もいない場合において、「特別縁故者」として相続財産の分与を受けることが家庭裁判所により認められた場合に限られます。

これら以外は遺産相続手続きの中で相続人以外の人が相続財産(遺産)を取得することはできません。

普段お世話になっていた等の理由でどうしても財産を分けてあげたいという場合は、遺言書を作成しておくか、いったん相続した後に、相続人から贈与するという形をとることになります。ただし、相続人から贈与する場合には贈与税などに注意するようにしましょう。


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A. 遺言についての答え

遺言書にはどのような種類があるのですか?また、その効力は?

遺言書とは、死亡後に法律上の効力を生じさせる目的で記載する書面をいい、民法に定められている形式以外のものは無効となります。なお、遺言書には「普通方式遺言」と「特別方式遺言」があります。

<普通方式遺言>
一般的に「遺言」というと普通方式遺言を指します。

go-to  遺言書の意義と種類

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証人が作成した文書のことです。公証人とは、主に裁判官や検察官の退職者等、法律を専門とする地方法務局嘱託の公務員で、各地の公証役場で執務をしています。

公証人が作成した文書は公文書として強力な効力を持ちますので、遺言を公正証書で作成することは非常に確実・安全であり、その確実性ゆえに自筆証書遺言等で必要な検認手続きも不要で、死後すぐに遺言の内容を実行することができます。

さらに、公正証書の原本は公証役場に保管されるため、紛失・変造の心配がありません。公正証書遺言の作成には、公証役場で2名以上の証人立会いのもと、遺言者が遺言の内容を公証人に口述しそれをもとに公証人が作成します。

go-to  公正証書遺言

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が全文・日付・氏名を自筆し押印したものです。
全部自筆で書かなければならいのでワープロ・代筆等も無効ですが、全く相続人の意思が反映しない場合は別にして、他人に手を支えられて補助のもとに書いた場合は有効とされています。

また、日付も正確に特定できなければならないので、「平成○○年10月吉日」という書き方では無効となってしまいます。

自筆証書遺言は公正証書遺言と違い、すぐに執行することができず、家庭裁判所に持って行き「検認手続き」を行わなければなりません。また封印されている場合は、家庭裁判所で開封しなければなりません。

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秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言者が署名押印し封筒に入れ、証書に用いたものと同じ印鑑で封印したものです。自筆でなくワープロ・代筆等でもよく、日付も不要です。
これを持って証人2人と共に公証役場に出向き、公証人に提出して自分の遺言であることを述べ、公証人が証書の提出された日付と遺言者の申述を記載し、遺言者・証人・公証人の全員が封書に署名・押印して完成となります。
秘密証書遺言を執行するためには、家庭裁判所に持って行き「開封」と「検認手続き」を行わなければなりません。

<特別方式遺言>

普通方式遺言が不可能な場合の遺言方式で、あまり一般的ではありません。普通方式遺言が可能となってから6ヶ月間生存した場合は無効となります。

一般危急時遺言

疾病や負傷で死亡の危急が迫った場合の遺言方式で、証人3人以上の立会いが必要です。20日以内に家庭裁判所で確認手続きを行わないと無効となります。

難船危急時遺言

船舶や飛行機に乗っていて危急が迫った場合の遺言方式で、証人2人以上の立会いが必要です。遅滞なく家庭裁判所で確認手続きを行わないと無効となります。

一般遠隔地遺言

伝染病により隔離された場合の遺言方式で、警察官1人と証人1人の立会いが必要です。家庭裁判所の確認は必要ありません。

船舶隔絶地遺言

船舶に乗っていて陸地から離れている場合の遺言方式で、船長または事務員1人と証人2人以上の立会いが必要です。家庭裁判所の確認は必要ありません。

遺言書の検認はなぜ行うのですか?また、どのように行うのですか?

検認は遺言書の偽造や変造を防止するため、また遺言書の内容や方法を調べ、その存在を確認するものであり、遺言書が有効か無効かを判断するものではありません。

普通方式遺言のうち、公正証書遺言以外の2つの遺言(自筆証書遺言・秘密証書遺言)については、家庭裁判所においての検認が必要となります。

検認手続きについては、家庭裁判所において相続人またはその代理人が立会いのもと遺言書の内容・方式を調べ、約1ヶ月~2ヶ月後に「検認済証明書」が交付されます。

go-to  自筆証書遺言

検認をせずに遺言書を執行したり、封印された遺言書を開封したらどうなりますか?

家庭裁判所の検認をせずに遺言書を執行した場合(公正証書遺言以外の場合)や封印された遺言書を家庭裁判所外で開封した場合は、5万円以下の過料に処せられます。この場合でも遺言書自体は有効とされ、改めて家庭裁判所での検認手続きが必要となります。

また、検認手続きで必要な書類として、家事審判申立書、遺言書、遺言者の戸籍謄本(出生から死亡まで)、相続人全員の戸籍謄本が必要となります。※相続人の状況に応じて、追加の戸籍謄本が必要となる場合があります。

go-to  自筆証書遺言

複数の遺言書が見つかった場合はどのようにすればよいでしょうか?

遺言書の内容がいずれも同様(矛盾しない)の場合は、いずれも有効となります。内容が同様でない(矛盾がある)場合については、遺言書の作成時期が時間的に最後の遺言書を優先します。

遺言執行者とは?

遺言執行者というのは、遺言書の内容を実現する職務権限を有する者を指し、遺言による指定か、利害関係者の申立てによる家庭裁判所の選任によって決まります。

遺言の執行は各相続人の利害の対立を生じるため、各相続人から遺言の執行に協力を得られない場合もあります。そのような場合、特定の人に遺言を執行する権限を与えた方が適当な場合もあります。遺言執行者はそのためにできた制度です。

遺言執行者は、遺言の執行に必要な一切の権限を持ち、相続人もその権限を妨げてはならないとされています。ただし、相続人に直接権利義務を移転させる形式の遺言についての遺言執行者の権限は、相続財産の保全等の行為に限られると考えられています。

go-to  遺言執行者

遺言者より受遺者が先に亡くなった場合の遺贈方法は?

遺言書に、受遺者が先に亡くなった場合の相続について記載がある場合を除き、この場合の遺贈は無効になります。そのため、受遺者が遺贈されるはずであった財産は法定相続人が相続することになります。

遺言が親族以外の者に全財産を与える内容になっています。法定相続人は何も相続できないのでしょうか?

民法では、「遺留分」(いりゅうぶん)という制度があります。これは、一定の法定相続人のために最低限相続できる財産を保証する制度です。一定の法定相続人の範囲は配偶者、直系卑属、直系尊属です。被相続人の兄弟姉妹は認められていません。

遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の三分の一で、その他の場合には二分の一です。ただし、遺留分のある相続人が二人以上いる場合、各人の遺留分は遺留分にそれぞれの法定相続分をかけた割合になります。

遺留分を請求する権利は、被相続人が亡くなったこと、およびそのような遺言書があることを知った日から1年以内(かつ相続開始から10年以内)に、受遺者に請求を行わなければなりません。

go-to  遺留分減殺請求

遺贈にはどのような種類がありますか?また、その効果は?

遺贈とは、遺言によって遺言者の財産の全部または一部を贈与することをいいます。遺贈する人を遺贈者、受ける人を受遺者と言います。受遺者は法定相続人のほか、法定相続人以外の個人または法人を指定することができます。

遺贈には以下のようなものがあります。

特定遺贈

「妻には自宅を、長男には預金を遺贈する。」というように、遺言書の中で具体的に特定の財産を指定する遺言を特定遺贈といいます。相続人はその財産を受け取るか、受け取りたくない場合はその権利を放棄しても構いません。

遺贈の放棄がされた財産は、相続人により遺産分割協議を行い、具体的な受取人を決定します。

包括遺贈

包括遺贈は、特定遺贈のように具体的な財産を指定するのではなく、「妻には三分の二を、長男には三分の一を遺贈する。」というように包括的な書き方をするものです。割合しか指定しないので、遺産分割協議により具体的にどの財産を相続するかを話し合う必要があり、普通の相続手続きとあまりかわりません。

遺言と異なる内容での遺産分割は可能ですか?

相続人および受遺者の全員が合意すれば、遺言書と異なる内容による遺産分割を行うことは可能です。ただし、遺言執行者が指定または選任されている場合は、遺言執行者の同意が必要です。


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A. 遺産分割協議についての答え

遺産分割協議の方法は?

遺産分割協議については、法律でやり方が定められているわけではありません。したがって、必ずしも全員が集まって協議しなくても相続人全員の合意が確認できるものであれば、どのような遺産分割協議を行っても構いません。

しかし、後日のトラブルを避けるためにも、遺産分割協議の際には相続人全員が合意した内容をもとに「遺産分割協議書」を作成しておいた方がよいでしょう。

go-to  遺産分割協議

遺産分割後に遺産分割協議に加わっていない相続人がいたことが明らかになった場合は?

遺産分割協議に加わっていない相続人がいた場合、その相続人が追認した場合は有効となりますが、追認しない場合はその遺産分割協議書は無効となりますので、遺産分割協議のやり直しが必要となります。

遺産分割協議後に新たに財産が発見された場合は?

遺産分割協議時に、後日発見された財産の分割方法について取決めを行っていない場合、その財産に関して改めて遺産分割協議が必要となります。当初の遺産分割協議時にそのような分割方法を取り決めておくのも一つの方法です。

寄与分とは?

寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加について特別の寄与・貢献をした人がいる場合、法定相続分通りに遺産分割を行うと不公平感が生じることから導入された制度です。

寄与分を定める手続きは、原則として遺産分割協議で行うことになりますが、遺産分割協議がまとまらない場合は家庭裁判所に調停や審判を申し立ててその額を決定することとなります。なお、寄与分の審判は遺産分割審判の申立てがなされていることが前提です。

寄与分の権利者の範囲は?

寄与分権利者となれる者は相続人に限定されています。つまり、法定相続人でない者(内縁の妻、事実上の養子など)は、どんなに貢献したとしても自ら寄与分を主張することはできません。なお、配偶者が療養看護に努めた場合などは、夫婦の当然の義務になりますので寄与にはあたりません。

特別受益とは?

特別受益とは、相続人が生前贈与を受けている場合や遺贈を受けている場合に、他の相続人との公平を期するために、相続財産を確定する際には受益分を持ち戻して計算し、遺産分割の際には相続分から受益分を差し引く制度です。

特別受益の対象は?

遺贈については、すべてが特別受益の対象となります。生前贈与については、何が特別受益になるかその対象は限定されています。

<特別受益の例>
■ 婚姻のための贈与:持参金・嫁入り道具・新婚旅行の費用など
■ 養子縁組のための贈与:持参金・新居など
■ 生計の資本:子供が世帯を持つ際に行った土地や財産等の援助など

しかし、被相続人が生前贈与や遺贈をする際に特別受益を相続財産に戻さない旨の意思表示をしておけば、相続部分の減額はありません(持ち戻し免除の意思表示)。また、遺産分割協議の際に相続人の間で生前贈与や遺贈をそのまま認めるような協議をすれば、持ち戻し免除の意思表示と同時に相続分の減額はありません。

限定承認の手続きは複雑と聞きましたが?

遺産相続が発生した場合、相続人は、①相続放棄、②限定承認、③単純承認のいずれかを選択することになります。

この中でも「限定承認」は、相続した資産を限度として債務を弁済するもので、相続した財産以上に債務がある場合であっても、相続人が自分の財産をもってまで債務の弁済をする必要はありません。

限定承認の手続きは、相続の開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に、相続人全員(相続放棄した者を除く)が財産目録などの必要書類を作成し共同して申し出ることが必要となります。すなわち、相続人の中で限定承認に反対する人がいる場合には、限定承認の手続きをすることができないということになります。

限定承認では、官報によって公告がなされ、相続財産の換金方法は原則として競売によってなされます。但し、相続人には先買権が認められており、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従がって、不動産を優先的に買い受けることができます。被相続人がかけていた生命保険金を不動産購入資として充てられるようなケースではこのような方法も効果的でしょう。

さらに、限定承認を選択した場合に注意しなければならないのが、税務上の問題です。

所得税法上、限定承認により資産の移転があった場合には、「その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があったものとみなす」(所得税法第59条)と規定されています。

つまり、限定承認を選択することにより、すべての資産を「時価」で譲渡したものとみなされ、譲渡所得税が課税されてしまうのです(みなし譲渡所得税)。そして、この譲渡所得については、被相続人(亡くなった方)の準確定申告において、申告する必要があります。

以上のように、限定承認の手続きは注意しなければならない点も多く、あまり利用されておりません。


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A. 相続税についての答え

被相続人に借金があることがわかりました。相続税はどうなりますか?

被相続人(故人)の借金は債務として相続財産から差し引くことができます。

遺産相続の場合、被相続人が借金の返済途中で死亡すると、相続人が放棄等をしない限りはその借金もマイナスの財産として自動的に引き継がれることになってしまいます。

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しかし、相続税はあくまで正味財産にかかるものですから、これらの債務は相続税を計算する際には相続財産から差し引くことができます。

go-to  相続税

相続財産から控除できる債務は次のようなものです。

  • 銀行等からの借入金、住宅ローン等
  • 個人間の借入金(借入れの事実を証明できるものが必要
  • 事業上の買掛金、未払金
  • 被相続人の未納の所得税(準確定申告分も含む
  • 固定資産税、住民税等で未払のもの
  • 被相続人の医療費で死亡時に未払いのもの

自分が社長をしている会社の株式を所有しています。このような会社の株式にも相続税がかかるのでしょうか?また、どのように評価したらいいのでしょうか?

中小企業の株式のように、上場されていない非上場株式は、相続税の計算上、複雑な評価が必要になります。非上場株式の評価は細かく規定されていますが、基本的には①株主の地位と②会社の規模の2つのポイントがあります。

① 株主の地位による評価の違い

株主が社長やその親族の場合、持ち株数も多く、会社に対する支配権も大きい場合が通常です。この場合、その他の株式に比べて評価は高くなります(原則的評価方法)。

一方、その他の株主は会社に対する支配権がないため、もっぱら配当金を受け取ることの期待のみとなりますので株式の評価は低めになります(配当還元方式)。

② 会社の規模による評価の違い

会社に対して支配権を持つ株主の株式を原則的評価方式で評価する場合に、会社によっては非上場でも上場会社に近いものから個人商店に近いものまで様々なものがあります。

そこで、上場会社に近いものについては会社の配当金額、利益金額、純資産価額を同業種上場会社の平均と比較して上場会社に準じて評価します(類似業種比準方式)。

一方、個人商店に近いものについては会社の純資産(資産-負債)価額を基に評価します(純資産価額方式)。なお、上場会社と個人商店の中間にあるような会社は、類似業種比準方式と純資産価額方式を併用して評価します(併用方式)。

非上場株式の評価額は、想像以上に多額になってしまうケースも多いです。評価が多額になり、相続税が払えないということになっては大変です。

相続で困らないためには、生前のうちに株価を評価し、事業承継対策をうっておく必要があります。事業承継対策は早めにすればするほど効果があります。また、経営者としても、自社株の評価額は当然把握しておきたいものです。

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配偶者は相続税が安くなると聞きましたが?

相続をした各人の相続税の計算をするとき配偶者には「配偶者の税額軽減」という特例があります。これは、配偶者が受け取った財産の額が、法定相続分以下か、もしくは法定相続分以上でも1億6,000万円までは申告をすることによって税額を減免できるようになります。

<配偶者の税額軽減額の計算>
配偶者の税額軽減額  = 相続税の総額 × AまたはBのいずれか少ない金額 / 課税価格の合計額

A=課税価格の合計額に配偶者の法定相続分を掛けて計算した金額又は1億6000万円のいずれか多い方の金額
B=配偶者の課税価格(相続税の申告期限までに分割されていない財産の価額は除かれます)

上記で計算された配偶者の税額軽減額を配偶者の相続税額から差し引くことができるのです。ただし、そのためには相続税の「申告」が必要です。また、遺産をすべて配偶者に相続させると、その配偶者が亡くなった際の相続(二次相続)ではかえって相続税額が増えてしまうケースもあります。遺産分割を考える際には今回の相続だけでなく次の相続(二次相続)も検討することが大切です。

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大阪相続研究所では相続コンサルタントがお客様の相談窓口となり、行政書士・司法書士・税理士・社会保険労務士・不動産会社などの各専門家をコーディネートしながら手続きを進めていきます。そのため、一つとして同じ案件がないと言われる遺産相続の案件であってもオーダーメイドな遺産相続対策を提案することが可能なのです。遺産・相続・遺言についてのご相談は大阪相続研究所へご連絡ください。

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