まず相続手続きを!! 転売・廃車ができなくなります
自動車の持ち主(所有者)が死亡した場合、その自動車も相続財産(遺産)の一つになります。
自動車も不動産のようにその所有権を公示する仕組みがあり、第三者に対抗するためには、所有権の登録が必要です。自動車の登録は、国土交通省の管轄する仕組みで、手続きも概ね全国共通となっています。
自動車を相続で承継した場合、法律上は15日以内に名義変更することが義務付けられていますが、実際は名義変更しなくても登録済み自動車であれば運行に支障はありません。
しかし、いずれ転売したり廃車したりする場合、その時点で元の所有者の印鑑証明書・戸籍謄本等が必要になり、相続の時から時間が経過してしまっていて取れる書類もとれなくなって苦労することがよくあります。
また、故人名義のままで、名義変更することなくその自動車に乗っていて事故などを起こしてしまった場合には取り返しのつかないことになってしまいます。
そのため、相続手続きを先に済ませておかなければ、売ることも廃車にすることもできないですし、安心して自動車を運転するためにも、できるだけ速やかに名義変更しておくことをお勧め致します。
ローン支払い中の自動車を相続する場合
自動車のローン支払いが残っている途中で相続が発生した場合、自動車の遺産相続手続きだけに関していえば、遺産分割協議などの遺産相続手続きは必要ありません。
この場合、所有権留保によって、自動車の「所有者」は車のディーラーやローン会社等になっていますので、車の「使用者」の変更手続きをすればよいからです(※自動車の名義登録は「所有者」と「使用者」をわけて登録されるのです)
相続というのは「所有」を引き継ぐものであって、「使用」の引き継ぎは相続ではありませんから、遺産相続手続きとはならないのです。この場合には、そもそも被相続人に所有権がないので、自動車は相続財産(遺産)ではないことになります。(※ローンの契約内容によっては、残債の有無にかかわらず、所有権がローン会社になっていない場合もありますので、必ず車検証で確認することが大切です)
しかし、自動車の所有者はローン会社となっていても、ローン債務は被相続人のマイナス財産として相続財産(遺産)に含まれることになります。
そのため、残債務がまだかなり残っていたり、車のローン以外にも債務が多くあり、「相続放棄」をしたい場合、法定相続人のすべてが放棄して誰のものでもなくなれば、車の売却手続きがされ、ローン支払に充当されます。(この場合、売却手続きは、ローン権者が申立て、相続財産管理人が行います)
なお、相続放棄は、単純承認をすると認められなくなります。車の使用者変更手続きが単純承認と看做される可能性がありますので注意しましょう。
ローン支払い済みの自動車を相続する場合
この場合はローン完済時に所有者がローン会社等から新所有者へと所有権留保の解除手続きがされているはずですので、通常の自動車の遺産相続手続きとなります。
ただ、自動車ローンが完済されても自動的に所有者が変わるわけではなく、ディーラーも使用者からの申し出がなければ、その手続きを代わりにやってくれるわけではありませんので、所有者がローン会社等の名前のままになっている場合もあります。
所有権留保がなされていると、名義変更ができないため、基本的にそのままでは車を売ることも廃車にすることもできません。ローンが終わったら所有者名義を変更する必要があり、この手続きを「所有権留保の解除手続き」と言います。
自動車の相続手続き
●相続人が1人の場合
相続人が一人しかいない場合は、名義変更に必要な書類に加えて、相続人の戸籍謄本と印鑑証明書が必要になります。
●相続人が複数いる場合
相続人が複数いる場合には、相続人の内誰か一人が相続することも可能ですし、共有にすることもできます。名義変更に必要な書類に加えて、相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書および遺産分割協議書が必要です。
●相続人以外の第三者に名義を変更する場合(ダブル移転)
まず、自動車の名義を代表相続人に移転して、その後で、代表相続人から第三者に名義を移転するという手続きになります。正しく書類を揃えることができれば、申請は一度にできます。
必要書類
自動車の相続手続きは、相続人の一人が単独で相続する場合と、複数人が共同で相続する場合とで、必要な書類が違ってきます。 なお、相続による名義変更では、自動車の取得税はかかりません。
■一人が相続する場合
- 申請書(OCRシート第1号様式)
- 自動車検査証(車検証)
- 戸籍謄本(被相続人および相続人全員の記載があるもので、発行後3ヶ月以内)
- 遺産分割協議書または遺言書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 委任状(車を相続される方)
- 手数料納付書
- 自動車保管場所証明書(車庫証明)
- 自動車税申告書
■共同で相続する場合
- 申請書(OCRシート第1号様式。人数に応じた枚数のOCRシート9号)
- 自動車検査証(車検証)
- 戸籍謄本(被相続人および相続人全員の記載があるもので、発行後3ヶ月以内)
- 遺産分割協議書または遺言書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 共同相続人全員の委任状
- 手数料納付書
- 自動車保管場所証明書(車庫証明)
- 自動車税申告書
相続した車を売却したり、廃車(登録抹消)したりする場合は、一度相続人へ名義変更しなくてはなりません。
なお、管轄の違う自動車検査登録事務所の場所に移す場合は、ナンバーを変えるので自動車自体の持ち込みが必要となります。