公正証書遺言

担当専門家  行政書士

公正証書遺言

公正証書遺言は、遺言者が遺言の内容を公証人に口頭で伝え、公証人がこれを筆記し、公正証書による遺言書を作成する方式の遺言です。つまり、公正証書遺言とは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言のことをいいます。

公正証書は、公証人が作成する公文書であり、公証人は裁判官や検察官などを務めた法律実務家が任命されています。そのため、公証人が作成者の意思を確認しながら作成する公正証書は、社会的に信用性が高いとされています。

したがって、公正証書による遺言書も一般的に信用性の高いものとされているのです

<公正証書遺言のメリット>

  • 法律の専門家である公証人が関与するので、方式の不備や内容の不備による無効を回避できる
  • 遺言書が公証人役場に保管されるので、偽造・改ざんのおそれがない
  • 遺言者の死後、遺言書の検索が容易
  • 家庭裁判所の検認手続きが不要
  • 自書能力がなくても作成可能

<公正証書遺言のデメリット>

  • 遺言書作成に費用がかかる
  • 公証人の関与が必要であり、手続きも厳格であり、証人2名の立会いを要する
  • 遺言書の存在と内容の秘密を確保できない

公正証書遺言を作成する場所は、原則として公証役場ですが、遺言者が入院中であったり病気のため外出が困難である等の理由で公証役場まで行けないときには、公証人が出張しれくれます。

公正証書遺言の原本は公証役場に保存されます。公正証書の原本の保存期間は規則上20年ですが(公証人法施行規則27条)、遺言の場合、遺言者がなくなるまで保存されないと意味がないので、20年経過後も保存されているのが実務上の取扱いのようです。


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公正証書遺言の検索

相続が発生した際に被相続人が公正証書遺言を作成していたかどうかは、平成元年以降に作成された公正証書遺言であれば全国の公証役場にて検索照会することによって確認できます。

<公正証書遺言の検索の手順>

  1. 被相続人が死亡したことを証明する資料(除籍謄本等)と、照会しようとする者が相続人であることを証明する資料(戸籍謄本等)を準備して、公証役場に持参します(身分証明書も必要)
  2. 公証人に遺言の検索・照会を依頼します
  3. 公証人が日本公証人連合会事務局に遺言の有無を照会し、その結果が照会者に伝えられます
  4. 照会者は、公正証書遺言が保存されている公証役場で、遺言書の謄本を交付してもらえます

公証役場で作成する場合の公証人の手数料

公正証書遺言を作成する際の公証人の作成手数料は、相続あるいは遺贈する資産の額で決まります。つまり、相続人あるいは受遺者ごとに計算します。

公証人手数料令によると以下の表のようになります。

目的価格 手数料
~100万円 5,000円
~200万円 7,000円
~500万円 11,000円
~1,000万円 17,000円
~3,000万円 23,000円
~5,000万円 29,000円
~1億円 43,000円

※1億円超は、5,000万円きざみで徐々に高くなります。
※1億円以下の場合、遺言加算11,000円があります。
※行政書士への報酬と実費経費が別途かかります。

例えば、長男1人に1億円までの財産を全部相続させると、1億円までの手数料43,000円と総資産1億円に至るまでに加算される遺言加算金11,000円、これに用紙の枚数によってかかる用紙手数料が通常は数千円かかりますので、合計で55,000円前後ということになります。

ところが、同じ1億円でもこれを長男に5,000万円、次男に5,000万円それぞれ相続させる場合は、長男分5,000万円までの手数料29,000円と次男分5,000万円までの手数料29,000円と遺言加算金11,000円と通常かかる用紙手数料数千円で、合計が70,000円前後となります。

なお、この事例でさらに長男を祭祀主宰者に指定したり、三男を推定相続人から廃除したり、遺留分減殺請求に対する特別の意思表示をする等、法律上の意思表示がされた場合には、その一つの意思表示ごとに算定不能の11,000円の手数料がかかります。

遺言者が病気のため公証人が出張した場合

遺言者が病気のため公証役場に行けない場合は、その公証人が所属する都道府県の法務局の管轄範囲内なら公証人は出張してくれます。ただし、その場合は病床加算ということで基本手数料が1.5倍となるのです。これに執務時間が4時間以内の場合は10,000円の日当、4時間を超えた場合は20,000円の日当がかかります。

手数料①例えば、長男に5,000万円、次男に5,000万円を相続されることを内容とする公正証書遺言を公証人に出張してもらって作成する場合には、長男分5,000万円までの手数料29,000円と次男分5,000万円までの手数料29,000円を足した合計額58,000円に1.5をかけた87,000円に、執務時間が4時間以内であれば10,000円を日当に加えた97,000円がかかります。これに加え、遺言加算11,000円を加えた108,000円とこれに用紙の枚数によってかかる用紙手数料が通常は数千円かかるのです。

遺留分減殺請求に対する別段の意思表示等がされた場合

上記の事例で長男を祭祀主宰者に指定するとか、三男を推定相続人から廃除するとか、遺留分減殺請求に対する別段の意思表示等、法律上の意思表示がされた場合は、その意思表示ごとに算定不能の11,000円を基本手数料に加え、それを病床加算として1.5倍し、さらに日当と遺言加算の11,000円と用紙手数料を加えた額が手数料となります。

遺言加算は、全体財産が1億円以下の場合に加えるものなので、基本手数料に加えて1.5倍することはせず、最後に加えます。

手数料②上記の例だと、長男分5,000万円までの手数料29,000円と次男分5,000万円までの手数料29,000円と長男を祭祀主宰者に指定する手数料11,000円を足した合計69,000円に1.5をかけた103,500円に、執務時間が4時間以内であれば10,000円の日当を加えた113,500円と最後に遺言加算の11,000円を加えた124,500円と通常かかる用紙手数料数千円がかかります。


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公正証書遺言の作成方法

公証人に公正証書遺言を作成してもらう場合、遺言者が公証役場に行くことが出来るのであれば、どこの公証役場に行っても公正証書遺言を作成してもらうことができます。

しかし、遺言者が高齢の場合等で公証役場に出向くことができない場合には、公証人に出張してもらうことも可能です。公証人の出張できる地域は公証人が所属する法務局の管轄内に限定されますので、都道府県をまたいで出張することはできないとされています。

公証人は必要書類を確認し、遺言者または行政書士などから説明を聞いたうえで、公正証書遺言の原案を作成してくれます。この原案を遺言者が確認したうえで、最終的な公正証書遺言を作成します。

その後、証人の立会いのもと公証人が公正証書遺言の内容を遺言者に読み聞かせ、遺言者がその内容でよければ署名と押印を行います。また、証人も作成の場に立ち会ったことの確認のため署名と押印を行います。

必要書類

  • 遺言者の印鑑証明及び実印
  • 遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍謄本
  • 財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票
  • 証人の免許証の写し及び住民票ならびに認印
  • 不動産が含まれる場合には、登記事項証明書及び固定資産評価証明書
  • その他財産がわかる資料の写しまたは明細一覧表(メモ可)
  • 例)預貯金…残高証明書/金融機関名、支店名、口座番号、金額が記載されたページの写し
  • 例)有価証券…証券種類、発行者、証券番号・口座を記載した書面の写し

原案作成

行政書士とお客様とで何度か打合せを重ねて遺言書の原案を作成します。そして、出来上がった原案を公正証書へ提出します。

証人の依頼

公正証書遺言の場合、2人以上の証人が必要です。

ただし、以下の者は証人にはなれません。
・未成年者
・推定相続人及び受遺者ならびにこれらの配偶者及び直系血族
・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

作成当日の流れ

  1. 証人2名立会いのもと、遺言者が遺言の内容を公証人に口頭で伝えます。
  2. 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、または閲覧させます。
  3. 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認し、署名・押印します。なお、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができます。

保管

公正証書遺言は、原本、正本(原本と同一の効力を有する文書)、謄本(原本に相違ないことを認証した文書)の3部作成されます。原本は公証役場で保管され、正本、謄本は遺言者に渡されます。

遺言者の死亡後、遺言執行者または相続人は保管してあった公正証書遺言の正本または謄本に基づいて遺言執行の手続きを行います。

go-to  遺言執行者

なお、公正証書遺言によって遺言書を作成しても、その遺言内容が相続後に実現しないこともありますので注意が必要です

というのは、公証人の仕事は遺言書の作成であり、作成された遺言書が実現するかどうかは関知する立場にないからです。例えば、遺言者が遺産相続手続のことをよく知らず、遺留分を侵害した遺言書の作成を依頼すれば公証人は作成してくれます。

そこで、相続後に遺言書どおりに実現されやすい遺言書の作成を望むのであれば、専門家に相続関係説明図や財産目録を作成してもらい、検討を重ねた後に公証役場に出向いて公正証書遺言を公証人に作成してもう方がよいでしょう

遺言書作成を得意とする行政書士のような専門家に依頼すれば、様々なアドバイスをもらえるでしょうし、遺言内容も実現しやすくなります。相続が発生した場合の相続人間の調整にかかる費用や時間のことを考えれば、遺言書作成の段階から専門家に依頼しておくべきです。

自筆証書遺言のメリットを生かした公正証書遺言の活用法

遺言書作成を得意とする専門家に相談すると、公正証書遺言を薦めるケースが多いように思います。なぜなら、遺言は厳格な法律的要件を満たさなければ無効になってしまう要式行為なので、専門家として有効な遺言書を作成するためのアドバイスとして、より安全な公正証書遺言を薦めるのは当然といえます。

しかし、公正証書遺言では遺言書が完成するまでに比較的時間がかかってしまいます。そこで、自筆証書遺言のメリットを生かした公正証書遺言の活用も検討してみましょう

遺言者が遺言書を作成する場合、その際の状況は遺言者によって様々ですが、緊急性を要する場合や緊急性がなくともとりあえず遺言書を作成しておきたい場合、まず自筆証書遺言で遺言書を作成しておき、後日、同じ財産について公正証書遺言を作成するようにします

こうすることにより遺言がない場合のリスクを自筆証書遺言の作成で防止することができますし、法律的にもしっかりした公正証書遺言を最終的には残すことができるのです。

go-to  自筆証書遺言

また、実務では自筆証書遺言や公正証書遺言の作成に際し、遺言事項とは別に「付言事項」といって、例えば、財産を特定の者に相続させることにした理由を記載する等、遺言の執行を円滑にするために法的効力がない事項を遺言書に記載することがあります。

こうすることで「遺言者の想いを伝える」という遺言の気持ちの部分を少し取り入れることが可能になります。

go-to  付言事項

聴覚・言語機能障害者に関する特則

公正証書遺言作成に際しては遺言者による口授および遺言者への読み聞かせが必須の要件となるため、従来は聴覚・言語機能障害者について公正証書遺言を作成することはできないとされていました。

しかし、社会的な要請の高まりを受け、平成11年に民法が改正され、聴覚言語機能障害者に関する特則が設けられました(民法969条の2)

口がきけない者

遺言者が「口がきけない者」である場合には、公証人および証人の前で遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述するか自書して、口授に代えることができます(民969条の2第1項)。

「口がきけない者」には、言語機能障害により発話できない者、聴覚障害のために発話不明瞭な者や、病気や高齢のために発音不明瞭な者も含まれます。

通訳人は、特定の資格(手話通訳士等)を有する者に限定されるわけではなく、遺言者の意思を確実に他者に伝達する能力があれば足りるとされています。

耳が聞こえない者

遺言者または証人が「耳が聞こえない者」である場合には、公証人は筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者または証人に伝えて、読み聞かせに代えることができます(民969条の2第2号)。また、公証人は、筆記内容を閲覧させる方法によることもできます(民969条3号)。

通訳人の通訳による方法にするか閲覧による方法にするかは公証人の選択によりますが、筆記内容の正確性を確保するために両者を併用することも可能です。

公証人による付記

聴覚言語機能障害者に関する特則により、公正証書遺言を作成したときは、公証人はその旨を証書に付記することになっています(民法969条の2第3号)

遺言書を作成する際には、相続人関係や財産構成はもちろん、遺留分のこと、不動産の共有関係のこと、特別受益のこと、非嫡出子の認知のこと、銀行預金のこと等、様々なことに注意しながら、かつ法律の要件を満たした有効な遺言書を作成しなければなりません。そのため、まずは遺言書作成を得意とする行政書士がいる大阪相続研究所に相談されてみることをお勧めいたします。

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