遺言書の意義
遺言書は、自分の死後、残った財産(遺産)の処分方法などを言い残す手段です。その内容は、死んでいく人の最後の意思表示ともいえます。
しかし、故人の財産をめぐり、家族や親族が争う「相続」ならぬ「争族」が増えてきているのが現状です。昔は長男が家財を受け継いでいたのですが、戦後は「兄弟姉妹は平等」という意識が浸透し、各人が財産を要求するようになってきました。
遺言書は、そのような争いを避けるのに有効なものです。
法律が定める法定相続分できっちり分けることもできますが、相続人が複数いる場合は、それぞれの言い分があり、なかなか収拾がつかなくなることが少なくありません。
財産の持ち主であった故人の意思が書かれた遺言書がある場合には、相続人も多少その内容に不満があったとしても比較的受け入れやすくなるものです。
ただし、せっかく遺言書を遺しても、その遺言書の形式が守られていないと無効になってしまいますので、注意しましょう。
※遺言書は「遺書」と混同されがちですが、遺言書は民法の規定に従って作成され法的効力があるものです。一方、「遺書」には特に定められた形式などはなく法的効力もありません。
遺言書の種類
遺言書を残す方式には、一般的に用いられる「普通方式」と緊急時の「特別方式」があります。
■特別方式:死亡危急者遺言、船舶遭難者遺言、伝染病隔離者遺言、遠隔地遺言
緊急時に作成される「特別方式」は、一般的に作成される機会はほとんどないと思われますので、ここでは「普通方式」の3種類についてご説明いたします。
■自筆証書遺言
遺言者が自筆で全文を書くので、費用がかからず手軽に作成できます。しかし、法律が要求する形式を満たさずに無効になりやすい側面があります。
また、体力がない、障害があるなど自筆で書けない場合は用いられません。
■公正証書遺言
公証人によって作成、保管されるため、偽造や紛失の危険がありません。相続人の間で争いが起きそうな場合には公正証書遺言をおすすめしています。
ただし、公正役場に足を運ぶなどの手間や費用がかかります。
■秘密証書遺言
封印した遺言を公証役場で申述することで遺言書の存在は保証される一方、内容は秘密にできるものです。作成時も自筆にこだわらない点は手軽ですが、検認が必要となります。
(秘密証書遺言は実務ではあまり作成されません)
各種遺言書のメリットとデメリット
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
---|---|---|---|
作成方法 |
|
公証役場の公証人に口述し、作成してもらう |
|
公証人 | 不要 | 必要 | 必要 |
証人 | 不要 | 2人以上の証人が必要 | 2人以上の証人が必要 |
変造・偽造・隠匿の危険 | あり | なし | ほぼなし |
保管場所 | 遺言者が保管 | 公証役場が原本を保管 | 遺言者が保管 |
家庭裁判所の検認 | 必要 | 不要 | 必要 |